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愛流の右斜め前にいた、谷重蛍が顔を下げ、目から光るものを落とした。彼女もいつも成績上位者であり、大変優しくもあった。愛流は、どうして蛍ではなく、自分がコアへ行けることになったのだろう、とふと思った。
「ここで共に過ごし、学んだ期間は、皆さんの中で一生変わらない事実です。7人も、それだけは覚えておいてください。本来ならば、真っ先に7人の努力をねぎらい、パスしたことを共に喜ばなければならないのでしょうけれど…」
コーチの声が震えていることに、愛流は気が付いた。横にいるひかるは、ずっと前から泣いているし、玲奈も必死に涙をこらえていた。
「二度と会えないかもしれないと思うと、とても手放しで喜ぶ気持ちにはなれませんね。しかし、私たちはこの複雑な気持ちを共に有することができます。共に過ごし、学び、喜び、悲しんできたからこそ、悔しく思ったり、嬉しく思ったり、嫉妬したり、悲しんだり、色々な気持ちが交差していくものです。今、皆さんの顔を見て、それぞれ色々感じていることがわかります。そのことを、私はとても嬉しく思います。」
コーチは一息置き、続けた。
「曽根川ひかるさん、増田玲奈さん、神宮司束さん、丸地明行さん、阿部一真さん、菊池沙耶さん、天宮愛流さん、本当におめでとう。よく頑張りましたね。そしてみなさん、私たちのクラスから、7人もの人が試験にパスしたことを誇りに思いましょう。そしてあなたたち7人は、私たちのことをどうか忘れずにいてください。そしてどうか、自分に嘘はつかないように…」
最後を締めくくった言葉に、愛流は違和を感じたが、皆それどころではなかったらしい。教室のあちこちですすり泣きが聞こえていた。愛流の右横にいたひかるが、愛流の方を見て、「がんばろうね」と口パクで合図し、愛流はそれにしっかりと頷いたのだった――――――。
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