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睦月学園の中等部と高等部はほぼ隣にある。
そして、レンが指定した“トーラス”とは喫茶店のこと。二つの学校のほぼ中央に存在し、平日の夕方は、中等部と高等部の学生たちで賑わっている。だがそこに向かうハルヒコの足取りは、いささか重たいものであった。
「はぁ……」
理由は、これといった情報がなかったため。故に、三十分ほどで会議は終了し、仕事も自宅で片付くほどしか残っていなかったために、こうして指定された場所に向かっているわけだが……。
「はぁ……」
もう一度ため息をつくと、店の前で足を止めた。
睦月学園が出来る前から存在しているらしいこの喫茶店は、外観こそボロいが、中はきれいなもの。ハルヒコのお気に入りの店の一つでもある。
意を決し、扉に手をかけ、内側に引っ張る。同時に店員に来客を知らせる鈴が鳴り響き、ハルヒコは中に入った。
見た感じ、店内に中等部の生徒の姿はなく、いつもより空いている。
すぐに右側の奥、窓際のテーブルを見ると、レンはそこにいた。しかし、何か様子が変だ。良く見ると、レンの後ろ姿。その向かいにウェイトレスがいて……やはり、困った表情を浮かべていた。
「でね、あのロリコン教師ってば……」
「コラ。何いってんだよ……」
「うぉう!?」
「…………」
今だと言わんばかりの苦笑いを浮かべ、ウェイトレスさんが去っていったのは――まあ、見なかったことにしよう。
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