●こんな日常●

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顔を洗って適当に身なりを整えると、いい匂いが立ち込めてきた。 鼻を擽る、スパイスの効いたカレーの匂い。 櫛を置いて、洗面所を出た。 「もういいのか?」 「なにが」 「身だしなみー。」 うちには立派なダイニングテーブルはない。 脚の短いテーブルを使ってる。 いそいそとカーペットの上に座ると、クニ兄は二人分のカレーを並べながら訊ねた。 「別に、気を使う相手もいないし。」 「何言っちゃってんのー! せっかくのキャンパスライフ、もっと若々しく充実させろって! あ、醤油とって。」 ん、と近くにあった醤油を手渡す。 「悟はさー、ベースは良い感じなんだから、もっと身なりに気を使っても……」 どんなに崩しても崩しきれない美青年が、何を言うか。 俺だって、そこまでお洒落に無頓着なわけじゃない。 髪はバイトで注意されない程度には染めてるし、服だってそれなりに選んで着てる。 「悟はピアス開けねぇの?」 「痛いの嫌い」 「ぶはっ 悟らしい!」 『悟らしい』 「……ねぇ、」 「あ!やっべ、もうこんな時間だ! わりぃけど、話はまた今度な!」 「……うん」
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