140人が本棚に入れています
本棚に追加
顔を洗って適当に身なりを整えると、いい匂いが立ち込めてきた。
鼻を擽る、スパイスの効いたカレーの匂い。
櫛を置いて、洗面所を出た。
「もういいのか?」
「なにが」
「身だしなみー。」
うちには立派なダイニングテーブルはない。
脚の短いテーブルを使ってる。
いそいそとカーペットの上に座ると、クニ兄は二人分のカレーを並べながら訊ねた。
「別に、気を使う相手もいないし。」
「何言っちゃってんのー!
せっかくのキャンパスライフ、もっと若々しく充実させろって!
あ、醤油とって。」
ん、と近くにあった醤油を手渡す。
「悟はさー、ベースは良い感じなんだから、もっと身なりに気を使っても……」
どんなに崩しても崩しきれない美青年が、何を言うか。
俺だって、そこまでお洒落に無頓着なわけじゃない。
髪はバイトで注意されない程度には染めてるし、服だってそれなりに選んで着てる。
「悟はピアス開けねぇの?」
「痛いの嫌い」
「ぶはっ
悟らしい!」
『悟らしい』
「……ねぇ、」
「あ!やっべ、もうこんな時間だ!
わりぃけど、話はまた今度な!」
「……うん」
最初のコメントを投稿しよう!