始点

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「途中… 途中途中… 俺はまだ 人生の途中なんだ」 夜道をあてもなくさ迷う男が1人 その男の名を伊藤カイジ 今日もまた ショボい博打に負け 暗い帰路を冬の寒風の中 歩いている 「また、負けた… くっ! なんだ! なんの涙だこれはっ 泣いてどうする! クソックソッ!」 カイジは行き詰まっていた 上京してはや1年 ろくな仕事にも就かず ろくに何かをしようとした訳でもない ただ毎日を己のセコい欲望のために費やす そんな毎日 「……… 金、か そうだ、金だ 何をおいても金 だが… 俺にはそれを掴む 力も、ツテも、機会も 何も持ってはいない 打開策は ない…」 また今日も 同じ問答の繰り返し カイジは感じていた 自分の世界 自分の周りの空気が 淀み、収縮し、閉塞していく そんな感覚を しかもその感覚は日に日に増すばかり そんな言い知れぬ感覚を振り払うように また己のうさを晴らすために 今夜もまた、カイジは獲物を探す 「チッ! こんな高級車に乗ってる奴らなんて どうせろくでもない連中に決まってる 人の弱味につけ込んで 暴利を貪る悪鬼 当然の報いなんだよ」 カイジの獲物 それは高級外車 自分の鬱憤を晴らすため その車にイタズラをする 軽い遊びのようなものだった しかし! 違う 今夜は違う 「おいお前! 何をしている!」 「!?」
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