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夜。
日付も変わり、よい子も悪い子もスヤスヤとお寝んねしている時間である。
そんな時間にも関わらず、未だに微睡むこともなく、布団の中で静寂に悶々としている困った子がいた。
オフタイマーが作動する度にクーラーの電源を入れ直し、タオルケットを深く被る彼女は久遠彩夏。
今年で大学一年生。
十代最後の夏を満喫中である。
「…………」
彼女は恨めしそうに、隣に敷かれた布団で眠る弟を睨みつけた。
規則正しい呼吸のリズム。
ツンツン頭の彼――久遠ハルは、夢の世界の住民権を獲得していた。
「ムカつきます…………」
自分がこんなにも苦しんでいるのに。
彼女は月明かりで照らされた部屋を見渡す。
自分達だけの、狭い狭い部屋。
二人分の布団を敷けば足の踏み場がなくなるが、彼女はそれでも満足だった。
彩夏は枕元で充電されていた携帯を見つけると、彼女はその白くほっそりした腕を伸ばした。
携帯は二つ。
彼女が手に取ったのは自らのものでなく、ハルの携帯だった。
パカッと、彩夏のしなやかな指が携帯を開く。
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