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鼻の奥がツンとするのを感じて、彩夏はハルの携帯を元の位置に戻すと、枕に顔を強く押しつけた。
途方に暮れていた。
何も、何も見つからなかったのだ。
ハルを起こそうとも正当(彩夏主観)な理由がない以上、自分はこのまま独りで日の出を迎えないといけない。
同じ部屋にいるのに。
すぐ隣で眠っているのに。
それはあまりにも悲しすぎるではないか。
そう考えた途端に彩夏が行動は出た。
タオルケットを勢いよく脱ぎ捨てる。
彼女が立ち上がると、そのお尻まで楽々と届いている見事な黒髪が、月明かりに照らされながら艶やかに流れた。
彩夏はハルのすぐ隣までてくてくと歩くと、音をたてないようそっとしゃがみ、彼の腕の中に強引に収まった。
「……姉さん……どうしたの?」
こんなことをされて、目を覚まさない人間はまずいないだろう。
ハルは腕の中を見取ることなくそう言った。
重い瞼は閉じたまま、ハルは彩夏の髪を撫でる。
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