手癖の悪い男

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手癖の悪い男

オレの名前は前田信吾、三十五歳。今日は久し振りの休暇だった。朝、図書館でも行こうと着替えたら、靴下がまだ、洗濯して乾いてなかったので、妻のを借りようと、引き出しの中にヘソクリが五万程、茶封筒に入れてあった。オレは何故かその中から一万抜いた。それから、ひどく自己嫌悪で、胃痛がして、図書館で太宰治の「人間失格」とドストエフスキーの「罪と罰」を四時間かけて読んだ。ますます、暗い気持ちになり、食事も受け付けず、飲みに出たが、ビールも飲む気分じゃなかった。今夜はひたすら寝よう。
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