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その瞬間、頭に女の声が聞こえた。
―この空を忘れないように…―
霞みがかってはいるが充分に聞き取れる。
突然聞こえた声に首を傾げた。
「今の…何?」
呟いた時、玄関の戸が開く音がした。
母が帰って来たのだと認識する。
『美阪ぁ、居るならちょっと手伝ってー』
「…ふぁい」
大きな欠伸をしながら部屋を出る。
部屋に残され、橙色の光を浴びた本は、青白く光った。
もちろん、美阪はそんな事など知る由もない。
「(…やっぱり…なんか変だ…)」
胸の高鳴りが止まない。
何か嫌な予感がする。
母の声さえも、今の美阪には届いていなかった。
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