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──ガキィィン──
鈍い音が部屋に鳴り響いた。
『懐刀を隠し持っていましたか。』
沖田の長い髪が揺れる。
「コイツを殺すと、主の力も半減する」
美阪であるはずの身体が、口元に笑みを宿し、懐刀を握る手に力を込めた。
今、二人は鍔ぜり合いとなっている。
ギリギリと音をたて、刃がぶつかり合う。
『半身の麻痺は、あなたのせいですね?』
殺気を放ちながら、沖田は言葉を述べる。
「ああ。美阪は、お前と同じ素質を持っている」
『生まれ変わり、ってところですか』
沖田からの殺気が消え、懐刀を閉まった。
「ご明答。この身体ならお前と太刀打ちできる」
『美阪さんの身体まで使って…何が目的なんです?』
ギロリと鋭い視線を突き刺し、刀を鞘に収める。
「アンタに存在を認めて貰いたいんだ」
真剣な眼差し。
美阪の身体を使い、大きくて真っ直ぐな瞳を沖田に向けた。
『無理ですね。あなたは所詮、私の心の闇なんですから』
「…いつか、絶対認めさせるからな」
歯を食いしばり睨み付ける。
沖田は嘲笑を浮かべ、部屋を出ようと襖に手を掛けた。
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