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「……ん、あれ?…生きてる…」
か細い少女の声。
沖田は素早く振り返る。
そこには目覚めたばかりのような美阪の姿があった。
「気が変わりました。あなたを殺すのは止めます」
澄ました表情を変えず、美阪の前に腰掛けた。
「……私、何もしてないのに殺されるなんて嫌です」
「何もしてない……?」
美阪は小さく話し始めた。
自分にしか聞こえない声がしたこと。
沖田総司の本が現れたこと。
本の頁に文字が浮き出たこと。
フラッシュバックのように映像が頭に流れたこと。
分かることは全て話した。
沖田は黙って眉間にシワを寄せている。
「私は…新撰組に関して何も知りません」
しばらくの沈黙の後、溜息をついた沖田が口を開いた。
「あなたは確かに私の生まれ変わりです。それでも、私はあなたを認められません」
「そんな…ッ」
「ここから出て行ってください。あなたはもう、死んでいることになってます」
冷静を捨てない沖田の言葉にはっとする。
「(そうだ……土方さんはあたしが沖田さんに殺されたと思ってるんだ)
でも、帰る所なんて無いんですっ」
「しっ、声を荒げないで下さい。他の隊士に気付かれます」
「すみません…。でも沖田さん、なんとかなりませんか?」
眉を下げ、弱々しく尋ねる。
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