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―平成―
「行ってきまーすっ」
少し焦りの入った元気な声が、朝の町に響いた。
『あ、待って美阪。部活の用意は?』
「あっぶな~!!忘れるところだった!!」
大声を発し、彼女はまた家の中に走り込む。
玄関に残された靴の踵(カカト)はぺしゃんこに潰れていた。
「じゃ、今度こそ行ってくる!」
『気をつけてねーっ』
眩しい日差しの下、母に見送られながら彼女、永藤美阪(ナガフジミサカ)は家を出た。
少々遅刻気味なので、全速力で走って学校を目指した。
『美阪ぁあ!遅いわバカ!』
『遅ぇよ。もう朝練始まってるし』
学校に着くなり、二人の友人から怒声を投げ付けられた。
二人共剣道の胴着を着ている。
西園寺舞(サイオンジマイ)と、不知火明(シラヌイアキラ)。
二人共美阪の幼なじみ。
明は一年生の時に美阪と入部した男勝りな女の子。
舞は最近入部したばかりのひよっこ。
美阪は剣道の全国大会女子の部で全国一位を手にした天才少女。
ファンや監督の間では【沖田総司の生まれ変わり】とまで言われている。
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