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『ほら、今日もたくさん来てるんだから急いで支度しろ!』
明に引っ張られ部室に放り込まれた。
格技場を見ると、美阪を見るために来た人がたくさん居た。
「うわぁ…今日もすごい…」
口元に苦笑を浮かべ、慣れた手つきで胴着を着る。
「明、準備出来たよ」
練習の相手は明。
美阪は面を付けて居ないが、明はがっちり防備している。
二人が定位置に着いた途端。
来客がざわついた。
『あ、始まるよ!』
『美阪ちゃんかっこいい!』
黄色い声援が飛び交う中、二人の周りの空気は殺気に溢れ、重苦しい。
『(美阪の目付きが変わった…。生半可な気持ちだとやられる。ここは少し距離をとっ)』
心の中で言い終わる前に、小さな風が吹いた。
その風が、明の髪を小さく揺すぶる。
『……………ッ!?』
明が気付いた時には、もう美阪が後ろに立っていた。
一瞬の出来事で、
人々は言葉も出ていない。
格技場は沈黙の場と化していた。
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