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『う…そ…』
頭、手の甲、腹に痛みを感じ、明はその場にしゃがみ込んだ。
あの一瞬で、美阪に打たれたのだった。
『明っ!!』
明を心配した舞が駆け寄る。
美阪は腕が良いため、部活中は後輩達に稽古をつけてばかり居る。
そのため舞は、美阪が本気で試合を行うのを見慣れていない。
震える明を抱きしめ、舞は美阪を睨み付けた。
『美阪…!明に何したの…!?』
彼女の緊迫した声に、ゆっくりと振り向く。
「何が?明になんかあったの?」
振り向いた美阪は、キョトンとしていた。
先程…阿修羅のようになっていた時の記憶は彼女から抜け落ちているようだ。
幼なじみである舞も驚きを隠せないのか、目を見開いていた。
彼女は簡単に嘘をつける程器用ではない。本当に何も覚えていないらしい。
『美阪…。…あんた…っ』
『…いいんだ舞。美阪はいつもこうだから…』
記憶がないんだから、責めても仕方ないだろ?と、虚ろな瞳で舞を見据える明。
『でも…明が…』
『あたしは平気。着替えよう、そろそろ授業始まるから』
「げっ!!1時間目体育じゃん!最悪~」
明の声を合図に、三人は立ち上がった。
他愛ない話をしながら、部室に向かう。
―主ト同ジ素質…ドコニイルノ…?―
「……?」
『どうしたの美阪?』
「ん、今なんか聞こえた気がして…」
『あたしは聞こえなかったけど…。気のせいじゃない?』
「そう、だよね。気のせいだよね、うん」
聞こえたものを空耳だと信じ、
三人は教室に向かって歩き出した。
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