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「ぬぬ~こぉひやったらぁ~」
その瞬間、まるで糸の切れた人形のように七海の意識が飛んでいた。脱け殻。魂のない殻。死んだように眠っていた……。
「……あれ? どうした……七海?」
返事がない。みるみるうちに俺の顔が青くなっていくのでわかる。まさか……死んだのか? いや……さすがにそれはないか。
「お~い? 七海?」
「…………」
「寝てるのはわかってる。起きないと胸揉むぞ」
「…………」
返事がない。つまり、揉んでいいってことだな。
俺の右手が七海の残念な膨らみに向かっていた。半分冗談半分スケベ心で二、三回七海の胸を揉む。
むにむに。柔らかい感触ではあるが……。
「はぁ……残念過ぎる」
「ひゃうっ! な、な何するの」
後ろから言葉。振り向くとそこには朝起きたように黒いワンピース姿の七海がいた。身長より断然大きい鎌を持って俺を見つめていた。ぴくぴくと眉毛が動いていた。
あれ? お、お怒りですか? 七海さん……。
「ねぇねぇ? ちーくん? 刺していい?」
満面の笑顔。やばい、謝らないと……殺られる!
「あ、えと……ごめん……え、あ、やめ……うぎゃああぁぁぁぁ!」
頭の天辺から心臓まで深々と鎌が刺さる。普通なら即死。死の痛み。その痛み耐えられず俺の意識は飛んでしまった。
こいつ……やり過ぎだろ。
暫くすると意識が戻っていた。すると刺されたこと関係なし俺は正座をさせられていた。自分の家の玄関で。七海はいつの間にかに自分の身体に元に戻っていたようだ。
「もう、信じられない! 女の子の肌を何だと思ってるの!」
「はい……。すいません」
「し、しかもしかもあたしが飛んでる最中に胸揉むんなんて! 信じられない! ちーくんの変態ぃ!」
「すいません……ほんの出来心で」
「しかもしかもしかも……『はぁ?』って溜め息ついたでしょ!?」
俺はただ謝ることしか出来なかった。ペコペコ上司に謝る部下のようひたすら謝り続けていた。
「もう! ちーくんは……えと……でりばりー?の欠片もないんだから!」
「デリカシーな」
「揚げ足をとらないの!」
怒りに任せ過ぎたのかかなり無茶苦茶なことを言っていた。
「なぁ? 本当に七海は死神なのか?」
「うん……そだよ」
「友には見えていなかったよな?」
「うん。あたしたち……死神にとり憑かれた者にしか聞こえないし、見えないの」
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