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「まぁ、その時は潔く死ぬわ~」
自然と俺は七海の頭を撫でていた。恥ずかしそうな顔で俺を見つめていた。内心は不安であるかもしれないがいつも通りの七海がそこにはいた。
「ううん。絶対ちーくんを死なせない……絶対に……」
小さな死神がそんなことを呟いていた。ぎゅうと強く大鎌を握りしめる。死を司る神――死神。
そんな彼女の大きな決意を俺は黙って聞いていた。
でも……。
でも……それは果たして……良いことだろうか……?
全ての生き物にある寿命が俺にはない……俺は一体……?
……止めよう。悪く考え過ぎだ。
その先を考えてはいけない気がした。
「……っか、まぁ、俺の死神がお前でよかったかもな」
話を変えるように俺はそんなこと言った。そしてさらに強く頭を撫でてやった。せっかくセットしてきた髪型がボサボサになっていたのは言うまでもない。
「ひゃう、痛いよぉ!」
「あはは~。悪い悪い。まぁ、これからもよろしく?でいいのか?」
「うん。毎日ちーくんを死から守ってあげる。よろしくじゃなくてお願いします……だよ!」
えへへといつも通りの笑顔はそこにあった。
「うん。だって、最後にちーくんを殺すのあたしだもん」
親指をびしっと立て、八重歯を出して微笑む。
頼もしいのか頼もしくないのかよくわからんな。
「んで、学校どうすんだ?」
腕時計を示すと七海みるみるうちに顔が青くなる。現在の時刻、八時二十分。朝のホームルームが始まる時刻である。つまり……。
「遅刻だな……」
ぽんぽんと俺は七海の頭を叩いてやった。二やッと笑いそして。
「計画通りぃ」
と言ってやった。
「今から行っても間に合わないし、将棋でもするか」
「しませんっ。つか、女の子を遊びに誘うのに将棋って何?」
「実は真田七海は死神兼有女性棋士だった」
「死神だけど女性棋士じゃないもん。ちーくんの意地悪ぅ」
ついでに七海は将棋がめちゃめちゃ弱い。わざわざ自分の兵を相手に差し出す打ち方。素人以前の打ち方だった。
「そんなこといいから早く学校行こう」
「えーっ。今、学校へ行ったら……クラスの奴らから『ひゅーひゅー。朝から合挽きか? 羨ましいなぁ~』って冷やかされるぞ」
「あたしたちはコーヒーか何かなの?」
「牛肉と豚肉を半々にまぜてひいた挽き肉だ」
「ん?」
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