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「はぁ? お兄ちゃん、何言ってんるの? 七海お姉ちゃんなんていないよ」
友はきょろきょろと辺りを見渡しながらそう言った。
「だからぁ……ここにいるだろう!」
俺は上を向いた。やっほぉ~と七海が友に向かって手を振っている。
友は全然気がついていない。
「お兄ちゃん……夢でも見てたの? どこにもいないよ……あぁ、もう~心配して損したよ」
「いや、本当だって! 本当って書いてマジなんだよ」
「はぁ……まだ目ぇ覚ましてないんじゃないの? まったくお腹がせいせいせーい!って言った時私がどんだけ心配したと思ってるの……もう人騒がせなんだから」
友は呆れ顔で俺を見ている。
何だその目は!? つか、お前は俺の頭のほうを心配してたのかよ!?
友はそんな俺を無視して時計を確認するとすぐに表情を変えた。
「あ、お兄ちゃん! もう、起きないと遅刻しちゃうよ!」
「え……。あ、本当だぁっ! やばいよ」
俺よりも先に七海が驚いていた。
「確かにまずいな。まぁ、どうでもいいや。とりあえず一時間目の授業は休む。ということでみんなでニ度寝をしようぜ!」
「「絶対にだめぇ!」」
七海と友の声が重なる。思わず身を引いてしまった。
本当はこいつ見えてるんじゃないのか?
「二度寝はだめ。でも今夜一緒に寝てあげるからちゃんと学校行ってね。遅刻はだめだよ」
おいおいその発言はさすがにまずいぞ。
七海が蔑むような目で俺を見つめていた。視線が痛い。穴が開きそうだ。
「じゃ、私もう学校に行くね。鍵、ちゃんとかけてね。お小遣いはいつものところに……。使い過ぎないでね。えと……お弁当もちゃんと持ってね。ハンカチは……」
「わかったわかった。お前は心配し過ぎだ。早よ行け」
こつと頭を軽く叩いてやる。
「あぅ、だってお兄ちゃん、甲斐性なしだもん」
デコピンに変えてやった。脳に何も詰まっていないからか、べちんといい音が鳴る。さすが俺の妹だ。
友は額を押さえ、大きな目に涙を溜め、訴えるような目で俺を見つめていた。
「あぐぅ~! 女の子の暴力振るから彼女出来ないんだよ。だからだから彼女いない歴=年齢になっちゃうんだよ」
べぇーっと小さな舌を出す。
あぐぅ~痛いところを突くな我が妹。
「……うるせいうるさい。早よ行け、行け!」
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