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友に普通の弁当箱にしてくれと頼んでも結局は止めてくれなかった。
『だって、可愛いじゃん!』
俺が言う度に友は言うのだった。俺が折れるしかなかったのだ。
ついでに兄の俺が言うのもなんだが友の料理はかなり上手だ。特に揚げ物は最高だ。あのサクサク感がたまらない。
冷蔵庫を開け、牛乳と卵ポケットに収まっている金色の卵を取り出す。上下に引っ張り、ぱかっと半分にする。
中にはお小遣いの500円玉が一枚入っていた。ほんのちょっぴり冷たい。ついでにこれは一週間分の小遣いである。
母親のいない御榊家では家計担当大臣は妹の友である。つまりお金の問題に対しては俺も父さんも友には勝てないのである。友を怒らせまっくた結果がこの500円。随分と酷い節約だ。
毎日弁当を持たせてくれるから飲み物代になる。一日一本計算になる。
ピンポーン!
「ちーくんちーくん! 早く~っ! は~や~くっ! 出てきてよぉ~っ!」
ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン! ピンポーン!
近所迷惑上等と言わんばかりの大声とチャイム連打。牛乳を冷蔵庫にしまい、パンをくわえながらドアを開けた
「はいはい、今出ます~。俺参上ってね」
「七海参上ってね、ちーくん? チャイムが鳴ったら早く家出てよ~。待ちくたびれちゃったよぉ!」
「お前、カップラーメンの三分間待てないだろ?」
「ん? タイマーで三分間正確に計るよ」
さっき死神として登場した真田七海がそこにいた。吹浦(ふくら)学園二学年を示す赤色のリボン。少し大きめブレザー。スカートは短く、すらっとした白い足が際立て見える。
「…………」
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