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 峠道を歩いていると後ろから月が昇ってきた。月は猛スピードで私を追い越し、山々の間に沈んでいった。  歩き続けているとまたしばらくして月が昇り、私を追い越し、沈んでいった。  金木犀の芳香が漂った。  月は何度でも昇っては沈んでいった。それは誰かの、生まれては潰えていく夢。  私がとうとう峠を越えてしまうのと、月が昇らなくなるようになるのと、どちらが早いだろう。  そんなことを考えているうちに朝がきて、私は目を覚ました。  ほのかに金木犀の香りがした。
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