ひぐらしが鳴く様に…

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「大好きだよ…だから傍に居て…あたしが消えるまででいいから…。」 こんなタイミングでしか 言えなかったこと 凄く後悔してる…。 今までずっと傍にいて それが当たり前だと思ってて だからこそ今まで気付かなくて… 「ありがとう。」 「ごめんね。」 「大好きだよ…。」 貴方は泣いた 私も泣いた ずっと好きだったんだ 今更気付いても遅いのに 幼馴染 そういってしまえば それまでだったかも知れない でも それ以上の気持ちに あたしは気付いてしまった…。 17年と3ケ月 今思えば 初恋だって 貴方だったのかもしれない…。 泣きじゃくる私の頭をなでて 貴方は泣きながら 「俺だって…好きだった…。」 って… 夢でもみているのかな 永遠に覚めない夢ならいいな… 小さな病院の窓の向こう ヒグラシが鳴く あたしの命は もう長く無い 薬の副作用で 肌だってボロボロになって もっと 綺麗で可愛い内に 言っておけば良かった。 涙が止まらない 「ごめんね…こんな身体で…ごめんね…あたし…綺麗じゃなくて…」 言葉が詰まる 申し訳なくて 情けなくて 怖くて 嬉しくて 泣きじゃくるあたしに 貴方は無言でキスをした あぁ…。 十数年も 心にこもっていた想いは 開け放され あともう少しの時間を刻むでしょう まるで蜩みたい 儚くて 切ない 綺麗で 残酷… でも でもね… ヒグラシは綺麗に鳴く たった一瞬のいのちの間に ただ 只管 綺麗に鳴く だからあたしも 消え行く数日間を 貴方と一緒に ずっと一緒に その一瞬があたしにとって 最高の時間であるように そして また… ヒグラシが鳴く 窓の外ではなく 暖かい 貴方の胸の中で… … 「うまれかわっても…貴方と会いたい…。」 【END】
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