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 綺麗な子だな、って思ったのが最初。  無理矢理染めたような汚い金髪じゃなくてさ、本当に太陽とか、麦畑みたいに綺麗な金色でさ。  柄にもなく、天使っているんだな、みたいなことを思ってたんだよ。  よく覚えてないけど、他の人たちも見惚れてたんじゃないかな。あの子に。  かくいう俺も穴があくほどあの子のことを見てたわけで。  見ていたから気付いちゃったわけで。  ともかく、さ。俺の最後の記憶は、嘘みたいに真っ青な空と、空にたなびくあの子の金色の髪だったんだ。他はあんまり覚えてない。けたたましいクラクションの音とか、急ブレーキの音とかもあったんだけど、正直どうでもよくなっちゃってた。  だって、俺の腕の中にいたあの子の甘い香りで、まともな思考はどこかに逝っちゃってたんだから。  ともかく、俺の人生はそこで“一度”幕が降りたんだ。
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