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納穂矢さんが亡くなって一月近くたったある日
その日はぽかぽかの陽気で桜の花が満開だった
朝から卵焼きの良い臭いがしている
俺達は納穂矢さんとの約束通り樺穂自慢の手作り弁当を持ち、満開の桜の花を見るために動物園へ向かった
あの日の、あの時のコースを一つ一つ辿るために…
レンタカーを運転するのは俺、助手席はあの日と同じく樺穂
そして…
後部座席には優しく微笑む納穂矢さんの写真を乗せて
あの日納穂矢さんが座っていたベンチの回りには沢山の桜が満開で、とても優しい風が吹いていた
ほんの三ヶ月前のはずなのに、なんだかとても懐かしい…
あの日
彼は確かにここにいて
笑っていた…
今日は本当に暖かで心地良かったから桜の木の下で弁当を食べることにして
俺はシートを広げた
「もう良いぞ、樺…」
桜を見上げた樺穂が
なんだか寂しそうに見えた
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