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日が暮れて参りました。細かい細工の施された大きな時計塔が煌々(きらきら)と、一瞬の煌めきを遺して夜に溶け込んでいきます。
途端、近くにおられた幽霊の方々が一時、時が止まったように立ち止まり、声も出さず、数分……いえ、刹那停止されました。私は特に何もなく、街灯の下辺りを不思議に見回します。
ふと、暗くなった空の色の段階を見上げます。すると黒い影が頭上を通過しました。目を凝らして軌跡を追うと、次第に黒い影の数が増えるのです。人が、空を飛んでいるのでしょうか。頭には大きな尖り帽子。
正しくあれは魔術師の格好でした。
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