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「こっこ?」
心配そうな声が聞こえて、ふっと我に返った。いつのまにか浮かんでいた額の汗を拭う。
「……ごめん、立ちくらみがしただけ」
「なら、いいけど……」
それでも心配そうな凛太に笑いかけた。こいつはお人よし過ぎる。それが良い所なのだろうが。
「思い出した。私完璧倉窪君に恨まれてる……よ?」
「よ? ってどーゆーコトだよ?」
「いや……うん、恨まれてると思う。でも倉窪君はいい人だけど」
思わず視線をずらす。背中に冷や汗が流れた。確かに思い出したのだ。誰かが泣いている情景のほかに……倉窪君を怒らせた日のことを。
私の言葉を聞いた凛太は無邪気に続きを催促する。
「とにかく教えろよ、その理由ってやつを」
「お、怒んないでよ」
「はぁ?」
片手を首の後ろに回しぎこちない笑みを浮かべた。
「……倉窪君の目をね、あの日初めてみたんですよ。あんまり黄色かったもんだし、ほら、肌褐色でしょ? 一目見て狼と錯覚して」
「錯覚して?」
「罵詈雑言叫びながら往復ビンタ、回し蹴り、アッパー、最後にジャーマンスープレックスなんぞを少々……」
「・・・・・・」
……視線が痛い……!
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