大飢饉の贄

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村長は最後まで暗い顔をしていた そりゃあ、当然だ 子供のいない村長は、孤児の私を実の娘のように想ってくれていたから だけど、村の人達は違う 実の子が贄なんかにされるくらいなら 他人の子がなればいいと思う けれど親の気持ちを思えばそんな事は言えるはずもなく ならば親のいない子を そう思うのは人の性 もともと親にすら棄てられた身 今更何に棄てられようが傷つくことはない 水筒と袋にはいるだけの干した果物 最後まではと取って置いた、村長の非常食 せめて死ぬ前くらい、いいものを食べたいだろうと、持たせてくれた 少ない荷物を革袋に詰めて、村の南にあるミサラギ山に向かった
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