見えない距離

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 しかし、気付いた頃にはもう遅かった。  素直になろうとしても、自分の中に作った殻を、そう簡単に破ることは出来ない。  「人間は、埋め込んだ負の感情をそう簡単には振り払えない」  それが今の俺の中にある現実……。 「……」  立ち止り、無言で空を見上げる。  夕陽は朱色の光を町一帯に降り注ぎ、幻想的な光景を作る。  人の影は長く伸び、遊び道具を持った子供達は笑いながら家へと帰る。  「あの子供達みたいに素直になれたら、俺も気持ち楽になれるのかな」  そんなことを呟きながら、家路を急いだ。
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