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けれど、そんな理屈よりも
まずは自分の傍で空の事を見守りたかった
それは、母としての我儘である
「でも…空…お願い…
私はもう貴方を手放してしまったのだと思ってる
魁の所にお嫁に出したんだってね…
でも、貴方の命に危険が伴うっていうのに、こんな遠くに居て
見守る事も出来ないなんて・・・」
母がここまで心を砕き、悲しむ姿を、空は初めて見た
いつも前向きで、いつも気丈で
大きな心で自分を支え、助けてくれた母…
これ以上、悲しませる事は出来ない…
自分も母になろうとしているのだ
ようやくその気持ちが判りつつあった
「判った…でも、ギリギリまではこっちに居させてね」
ユウは、顔を上げ空に向かって頷き、抱きしめた
これがお互いに出来る、最大限の譲歩だった
「あとね…ママに預かって欲しいものがあるの」
抱き合った状態で、空が言った
「何?」
身体を離し、ユウが問う
「これ」
そう言って差し出されたのは、
『延命拒否に関する』という
『尊厳死宣言公正証書』
いわゆる
リビング・ウィルを作る為の書類だった
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