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「これは…」
その書類に、ユウは愕然とした…
「私、暇なの」
そう言って、空は微笑む
「だから、魁がパソコンを持って来てくれて、色々調べてたら、こんなの見つけたの
でもこれをちゃんと作る為には、ママの承諾が要るのよ」
「こんな事…気持ちは判るけど…して欲しく無いわ」
ユウの声は、懇願に近かった
「ねぇ、ママ おじいちゃまが亡くなる時
機械がずっと付いてたじゃない?」
ユウの父は、癌を患い、長い闘病生活の終末は人工呼吸器に繋がれ
痩せ細って死んで行ったのだ
空が高校生の時だった
「おばあちゃまが、出来るだけ長く生きていて欲しいって、ずっと言ってたじゃない?
だけど、私…おじいちゃまの姿がとても悲しかった…
何も見る事も出来なくて、食事も出来なくて、声が聞こえてるのかどうかも判らない…
そんな風に生かされてるのって、私は嫌
生きる事には、自分の意思を持って居たいの」
「だからって…」
「これが必要になるかどうかも判らないでしょ?
でも、一応、念の為、転ばぬ先の杖って言うでしょ?」
そう言って微笑む空に
暫く会わない間に、こんなにも成長したのだと
我が子が、完全に手元を離れ巣立って行った事をユウに実感させていた
それだけの覚悟を持って、この子は此処に居るのだと思い知った
「転ばぬ先の杖って…それはちょっと違うでしょ」
そう言って、無理に微笑むユウ
「そう?まぁ、いいじゃない」
空は声を出して笑い
「ママ、お願い ママにしかこんな事頼めないの ママしか居ない…」
それは、そうだろう…
家族の承諾が必要なら、ユウしか居ない
その必要が無いにしても、魁にこんなものを託す訳にはいかない
それは余りに惨い事だ
「判った…ちゃんと作っておいてあげる…
けど、それはお守りみたいなものだって、私は受け取っとくからね」
そう、真剣な表情で言うと
「かなり物騒なお守りね」
と、空が言い、二人は涙を流しながら笑った
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