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空の手は、とても温かかった
目が覚めて、顔を上げると空の頬に触れてみた
少しひんやりとした頬は、抱き合って眠った最後の夜の
あの時の感触とは違っているように感じられた
頬の色も青白く
光の加減でそう見えるのだと信じたかった
その横顔も、違う人のようで
違ってくれれば、どれだけ嬉しいだろう…
そんな事を考えていた
「空…目を開けろ
子供にまだ会って無いだろ?
女の子だったんだ…
お前が生まれた時にそっくりだってさ
名前をつけてやらないといけないんだ…
みんな、他の子は親から名前を貰ってるんだ
あの子だけ名無しだなんて、可愛そうだろ?
いくつか二人で考えたよな…
でも、なんでか、男の子の名前はいくつか考えてさ
湊にしようって決まってたのに
女の子の名前だけは、決まらなかっただろ?
きっと、生まれてから二人で考えるように決まってたんだよ
だから、早く目を覚ましてくれ」
その声は心細げで
消え入ってしまいそうだった
このまま目を開けず
いつまでも眠ったような顔を見続けるような不安と
その先は、二度と声すら聞けないような絶望感
失っていまいそうな喪失感
それらは魁を蝕んで
空の日記を思い出しても
二度と幸せなど訪れないと感じられた
お前が居ないと……
後の言葉も、心の中ですら
続けられなかった
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