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気管に入れられた管は
まだそのままだった
痛々しく、顔色も青白く
疲れた表情で、憔悴している様子だ
魁はベッドに座って空の身体にピッタリと寄り添い
身体全部で、空を支えていた
この今という時間も
そして
これからの長い時間も
必ずこの手で愛する者を守って行くという決心が
その手には込められていた
キッと結んだ口元が
涙を堪えている事を物語っている
何が起こったのか
空はまだ理解していない
ただ、不思議な空間を
とても長い間漂い
今は、魁の力強い手に支えられ、ちゃんと生きている事だけは理解していた
目線の先には、母や姉
そして琉璃が安堵の思いを湛えた眼差しで、空を見ていた
その表情に
声にならない声で
『ただいま…』と
そう言っていた
魁の目は、空だけを見ていた
その視線を感じながら、どうにか魁の方へと目線を移す
なんてみっともない姿を
愛する人にさらしているんだろう…
などと
誰も気にしない筈の事を
何気なく考えていた
魁と目が合った時
空の目から涙が溢れた
その涙に応えるように
魁は、そっとその涙を唇で受け止め、頬にキスをした
もう抑える事の出来なくなった涙が、魁の頬を伝い
互いの頬を寄せて
「おかえり」
そう、空に向かって呟いた
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