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とりあえず、山は越えた…と、仲村医師はユウ達に告げた
「少しずつ前進しましょう
呼吸器は、近いうちに外れると思います
呼吸状態が改善すれば、明日にでも」
そう言われた事で、全員が安堵のため息を漏らし、本当の笑顔を見せた
流す涙も、心からの喜びがもたらす涙だった
空が目覚めてから、二日目
呼吸器が外された
「大きく息を吸って…吐くと同時に抜きますからね」
頷く空
思いっきり深呼吸をして、吐き出す時に、今まで空の命を繋いでいた管が抜かれた
「ゴホゴホッ…」
苦しそうな咳をして、また大きく深呼吸をした
声が出るのか心配だった
声を出す事を、忘れてしまっているような気さえした
試しに声を出してみた
「魁…」
しゃがれた声だった
「喉を痛めてるでしょうから、最初は少し声が出難いですよ」
そう言って医師は立ち去った
「空…」
魁は空の頭の後ろに手を差し入れ、そっと持ち上げて
もう片方の腕は両肩を包み込み、空の頬に自分の頬を当てて
ゆっくりと抱きしめた
かすれた声で空は、愛しい魁の匂いを感じつつ、その耳元に
「ごめんね…魁 心配かけて…」
そう言った
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