未来へ

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小さな小さなその身体は 呼吸の度にお腹が小さく動き 手のひらに握れば、すっぽりと隠れてしまいそうな小さな手に ちゃんと爪が生えている事に気付いて 当たり前の事なのに そんな事に感動していた 眠っているから、全く動かない 「小さいけど、ミルクもちゃんと飲むし、元気に泣くんですよ 何も問題はありません もう少し待って下さいね もうすこし大きくなったら、保育器から出られますからね」 そう教えてくれた看護師の言葉に、ホッと胸をなでおろす 「魁…抱いた?」 「ああ、手を入れてちょっとだけ」 「私も早く抱いてあげたい…」 また涙が流れて来た 「すぐだよ…焦るな まずはお前が元気にならないと」 ちょっと不機嫌そうな魁の声 「何か怒ってる?」 「……」 無言の魁に 「魁…?」 「お前が無理するからだよ… フラフラなのに、大丈夫って振りするし 立ち上がるのも精一杯なのに、大丈夫って言う 俺に意地張ったって仕方無いだろ? しんどくて当たり前なんだ しんどい時はしんどいって言え 甘えたく無いのも、頑張りたいのも判る けど、俺には素直に何でも言えよ」 早く元気になりたかった 早く子供の世話を出来るようになりたかった 出来るだ早く、時間を取戻したかった 大丈夫だと思われたかった 「ごめん…」 「判ったら、それでよろしい」 「うん」
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