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人気の少ない方へ、歩を進める。試験の続く第二闘技場からは大分離れたようだが、声は消えない。靴底と石床が噛み合う音でさえ鬱陶しいと言うのに。
本当ならば寮に戻るか、書庫にでも籠りたいところだが、それは出来ない。
今は試験中とは言え、授業中。フロレアルの外にある寮に行くことは出来ない。書庫も解放されてはいないだろう。
先程向けられていた視線や、贈られた拍手に対する苛立ちを抑え込み、ただただ無心で歩いた。自然と、足は早まった。
突如目を焼いた陽光に、はっと辺りを見渡す。いつの間にか校舎を出ていたらしい。
すぐ背後に、黒色の石材で出来た建物の存在を確かに感じる。
そこは、中庭だった。
建校時から在ると言われる巨木以外は、青々とした芝しか無い中庭。闘技場からはかなり遠い。
流石にここまで遠いと、教師から注意されてしまうだろう。されたら、今の精神状態で耐えられる自信はない。
直ぐさま踵を返そうとして、止めた。
人が居た。巨木にもたれ掛かるようにして、男子生徒が一人、寝ている。
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