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恋に悩みは尽きないもの、ましてや片思いならなおのこと。
この物語の主人公、桜花ゆら(おうか ゆら)もそんな一人である。
『はぁ…夏になろうとしてるのにあたしってこのままでいい訳。』
「でた。ゆらの最近の口癖、そんなに悩むんならいっそコクちゃえば?」
昼休み騒ぐ教室で自席で頬杖つく私に向かいに座る親友は言った。
『そんなこと出来たら今頃悩んでないし、タイミングが分かんないんだもん』
「ゆらの場合、幼馴染みだからねえ。期間が長すぎて向こうは妹辺りとしか思ってなかったりなんて」
親友の何気ない一言に気分が落ちる、まさに図星で言い返すことすら出来ない。幼馴染みという絆が強すぎて踏み出せないこの関係にジレンマを感じてしまう。
『うっ…あたしだってあいつに女の子を意識させようと、大体いつまで経っても子供なあいつが悪い』
「そういうところが好きなんでしょ?噂をすれば何とやらね、ゆらの王子様の登場よ」
親友が指差すほうに視線を移すと愉しげに男友達に囲まれて笑う幼馴染み、水城馨(みずき かおる)が現れ続く親友の言葉にぎょっとする。
『王子様って、あんなの王子じゃないし?馬鹿だし何考えてんのか分かんないし。』
「あら、恋する乙女の相手はいつだって王子様よ。」
明らかに私の反応を楽しんでいる様子の親友にむっとしながら視線を逸らすとばっちり馨と瞳が合い慌てて視線を戻す。
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