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「美月」という名の由来を、美月は知らない。そもそも親の顔すら見たことがない美月にとって、だから「家族」という概念はとてつもなく希薄だった。
談笑するふとした瞬間にも、家族のいる誰かといない自分の違いに気づかされて、感じる空虚な寂しさが美月は嫌いだった。
そもそも、孤児だと打ち明けることで浴びる憐れみの目線も気にくわない。否、あの頃はまだ孤児ではなかったが、それはどうでも良い。どうしてそんな目で見られなければいけないのだろう?自分はひとりで寝起きし、僅かな遺産に生活費を頼っているとはいえ働き、自炊し、自己管理して生活している。さみしいとも思わない。どこが「かわいそう」なのだろう。
分からない。苛々する。だって私はちっともさみしくなんかないのに。
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