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「あひぇ?」
「俺の勝ちだな」
一瞬の出来事だった為、理解出来ていないのだろう。目の前のゴロツキ改めゴミツブは自分の右腕と俺の顔を何度も見て、その微塵も透き通ってない目をパチクリさせる。
どうやらコイツは傭兵などではなくただの労働者なんだろう、自分の腕が肘の先から百八十度曲がったのを頭が認識出来ていない。
こんなイカついガタイしてるクセに、大した力でもなかった。ま、そろそろ痛覚が正常に働く頃だと思うが。
「ぐぎゃぁぁああ!! お、俺の、俺の腕がぁぁ!!」
「まぁ落ち着けって大したことじゃない。それよりも早く、この女にはしなくていいから俺に謝ってくれよ」
「そこの馬鹿。誰が最優先かを分かってないのなら、今すぐ達磨に進化させてやるが」
「こ、コイツら狂ってやがる! お、お前らとっとと逃げんぞ!」
これまた三流の下っ端、三下が吐かすような逃げ台詞を恥ずかし気もなく叫び、酒場を後にしようとする。
まぁ俺はあんな屑共に謝罪の言葉をいくら並べられようが、全く歯牙にかけないのでほっとこうとしているのである。が、隣のバーサーカーが大層ご不満な様子。
「どうしたエリサ? 二日目か」
「次舐めた事を吐かしたら貴様の体内を我が剣で掻き混ぜるぞ」
「全く、冗談も通じない女はこれだから困る。俺はまだここで仕切り直しに飲んでくが、お前はどうする? 俺の晩酌でもするか?」
「遠慮する。言わずともわかるだろう?」
「ほどほどにな」
俺は元の席に腰を下ろすと飲みかけの酒を、一気に胃袋に輸送した。エリサは愛剣と街中へ旅行するそうだ。
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