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「まずは、と……」
酒が頭頂部の血管に吸い上げられてるのか、若干の気怠さが身体に残っているようだ。そのため、溜まった疲れやその他諸々を癒してくれる風俗にでもいこうとした。
だが行く途中で修理を頼んでいた武器やらローブを取りにいく用事を思い出してしまった。
チッ、情婦を抱くのはまた後にするか……おっと失礼。
俺は裏通りに向かって動こうとする足を、小汚いボロ店に無理矢理方向転換させた。それにしてもやけに身体が怠いな……あぁ、いつもか。
☆ ☆ ☆
壊れかけの看板、オンボロの陳列された武具、気に入らない奴は店主が怒鳴り追い返すという、見事なまでの悪条件の下構成された鍛冶屋『ドルチェ』の目の前に俺は立っている。
ここのオッサンの腕を知らなきゃまず来ようとはしないだろうな。現に顔馴染みだったり、誰かの紹介じゃなきゃ鉄屑すら渡さない捻くれ度はどっかのトマト頭にすら匹敵するだろう。
一応これでも俺は礼儀・作法を大事にする人間。先程の残り金を確認し、ドアを蹴り開けた。
「よう生きてっかオッサ――」
「コラァァ!! この糞餓鬼ィィ!! 早く鉄持ってこい殺されてぇのか!!」
「は、はいッッ!! あ、カイトさんこんにちは」
そこにはいつもの光景が映し出されていた。というか作業の音よりオッサンの怒鳴り声のほうが煩いのはどういうことだ。
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