第一章―鬼退治―

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「何をしてるんだエリサ……」 「ん? 何処の不審者かと思えばカイトか。私をこの男達が欲望の赴くままに犯そうとしてきたのでな」  氷の魔女の如き眼で、右手に掴んでいるスキンヘッドの男を見抜くエリサ。腰まで伸びている深紅の長髪に、細く引き締まった肢体、男の目を自動的に引き寄せる自己主張の激しい胸と尻を併せ持つエリサには、『こういう』事はよくある。  無論、無理矢理な理屈で少し言い寄ってきただけの男達を安心してサンドバックにするためだ。 「ふ、ふざけんじゃねぇ! そっちが俺達に突っ掛かってきたんだろうが!!」 「……だそうだが?」 「お前は毎晩ベッドの上で愛している私と、そこのハゲを隠す為にスキンヘッドにしている男。どちらを信用するんだ」  周りの酒飲みからヒューウと酔ってるせいか妙に上手い口笛が飛び交う。このヨッパライ共めが。大体こんな凶暴で狂暴で強暴な女を誰が抱くか。  無表情な顔から口端を少しだけ吊り上げ妖艶な笑みを振り撒くエリサに、俺は溜息と哀れみの視線をプレゼントした。 「お前の口からは嘘しか垂れ流せないのか? 因みに俺は事実と金と自分しか信用しない」 「酒でその腐りかけの脳みそが更に蕩けたかと思ったが、どうやらまだ素面のようだな」 「お前と金にもならん口論をするつもりも時間もない。で、どうなんだ」  些か残念そうな表情に変わる女剣士。恐らく残念なのは、俺がコイツに欲情して襲ったところを再起不能したかった事だろう。
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