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「とりあえずソイツを離してやったらどうだ? いつまでもお前が胸倉を掴んでいるから、首が締まって泡吹いてるぞ」
「……おや? それもそうだ。汚いモノは好みではないからな」
「ふ、ふざけんじゃねぇっ!!」
目の前のスキンヘッドの連れと思わしきゴロツキ共が、ガヤの中から先程と同じ台詞を吐きながらぞろぞろと沸いて出て来た。
同じ台詞を吐くことから想像は容易いが、見た目も同じくトロール並みの頭の悪そうな顔ばかりが陳列する。どうせなら美人の女がいいんだがな。
「そこの女が俺達の酒を台無しにしやがったんだぞ!」
そうだそうだ、と後ろの奴らが騒ぎ立てるが、真偽の程は定かではない。何故なら、その女が真実を語ろうとしないからだ。
目線でいい加減話すように指示すると、エリサは渋々ながら溜息をついて話し始める。最初からそうしてほしいな。
「カイトが私に貢ぎ物を捧れば……」
「エリサ」
「……冗談の通じない奴だな。待ち合わせの時間になったから酒場にやってきて、店の中に入ってきたら道を塞いでるこの屑達がいたわけだ。それで私が可憐に退くよう頼んだら、ドブ臭い口で『姉ちゃんも一緒に晩酌してくれや』と……」
「判った判った。要するに、ソイツらがしつこく絡んできたのをエリサがボコした、んだな?」
「ああ」
事情を話せとは言っても全ての様子を詳細に話されても困る。事の顛末は手短かに、簡潔に話してもらいたいものだ。
俺はゴロツキ共に向き直ると、ニッコリ微笑みかける。
「今回は俺の連れが迷惑を掛けたようで悪かった。どうだろう折角の酒の席だ、ここは俺の顔に免じて手打ちにしてくれないか?」
「………………」
「あんだと? こっちは気絶までしてるのにお前の顔なんかで納得出来るか!」
不満そうな顔つきの相棒を宥めつつ、穏便に済ませようとしたんだがどうやらコイツらには気遣いは無用の長物だったみたいだ。
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