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『睡姫症候群(Sleeping Beauty Syndrome)』
フランスで突如発症し、瞬く間に全世界に広まった感染症。
感染した者は、一日の睡眠量が日に日に増えていき、最後には文字通り、眠るように死んでいく。
治療法は見つかっていない。
今この瞬間も、病魔は着実に身体を蝕んでいく。
リズムのずれた鼓動にとてつもない不安を覚える。
「……愛してる。」
「…いきなり何だよ。」
「言いたかったの。」
「………そ。」
「うん。」
「…オレも。」
「え…?」
「愛してる。」
そんな不安も、一瞬で消してくれる彼が愛しくて、憎い。
このまま溶け合って、一つになれればいいのになんて、俗人の考えが浮かんだ。
遠くから聞こえるコツコツという足音が、
私達の躯を削り取っていった。
(その音は時計の針の音にも似ていて、)
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