話は教室に戻って…

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「ねぇ、柊…」 「…何?」 「お前って…結構やさしいよね」 克也は素直にそう思い、口にした。 「ど…どこがやさしいのよ!」 「いや、だって普通、俺の分の焼き芋買ってきた時点でもうやさしいだろ」 多分普通の女子なら自分の分だけ買って人の分なんか買わないだろう。 ましてや男子、そしてあまり親しくない友人などには…。 「でも…それはたいやきを買わせなかったから…」 「いやいや。普通の女子ならそんなの知らん顔だよ」 普通の女子なら、私そんな事言ったっけ?などと言ってはぐらかすだろう。 「でも…」 「それに!」 克也は続けた。 「俺の分の焼き芋を買ってきてくれただけで十分なのに、謝ってくれたじゃん」 多分普通の女子なら、 「はい!これでさっきの出来事は全部なしね!」 とか言って片付けそうだけど…かがみの場合は違う。焼き芋をくれて、さらに謝ってくれたのだ。 「……」 「な?柊はやさしいだろ?」 克也はそう言い終わると無性に恥ずかしくなった。 (何言ってんだろ…。めちゃくちゃ恥ずかしいじゃん) そんな心情を知ってか知らずか、かがみはさっきよりも穏やかな顔で言う。 「ありがとう、平木。そう言ってくれて…」 「い、いや、別にそんな大した事を言ったわけじゃ…」 自分の顔が赤くなっていくがわかった。 「と、とりあえず焼き芋を食べよう!本当に冷めちゃうよ!」 「そうだね…。じゃあ食べますか!」 そう言うとかがみは笑顔になって焼き芋を食べ始めた。 その笑顔を見て、克也は少しドキッ、っとした。 「ん?どうかした?」 かがみが聞いてくる。 「ううん。なんでもない」 克也は答えた。 「変なの」 「変で悪かったね~」 そう言うと二人は笑った。 克也はこの時思った。 もしかして…俺は、柊の事を…。
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