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金木犀の香りに目眩がする。中途半端な自分を責めるかの様なこの香りに。
初めてあの子をみたのは、朝練終了後の部室にひょっこり顔を出したとき。一目見て、よく忍が話している幼なじみの女の子だって分かった。それと、忍がその子の事が好きだって。あいつの反応みれば、すぐに分かったよ。なんか、初々しい、意外な一面に笑えた。
それなのに忍はあの子をわざと遠ざけているかの様で、気が付けば要らぬ世話をやいていた。
手のやける子供ほど可愛いってヤツに似てるような気がする。
ちょっとでもあの子との溝が埋るように。なんて、何でそんなことしたのだろうと後々で後悔するなんて考えてなかったんだ。
いつしか、彼女の名前を言葉にするだけで、胸が温かくなるような気がした。彼女の周りだけ視界が色鮮やかに見えた。笑ってる顔が、目に焼き付いて離れなくなった。
恋を……してしまったんだ。
なぁ、忍。
あの子を追いかけて走っていくお前を止める権利は俺にあるのかな??
中途半端な自分と嫌ってくらい真っ直ぐなお前を重ね合わせてみる。
ただ、胸がズキンと鈍い痛みを覚えるだけだった。
金木犀の香りだけが、その場に残った。
月夜の下に立ち尽くす。
<俺は偽善なのかな><願わくは、彼女が幸せでありますように>
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