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焼きとうもろこしとおじいちゃん
お日様が顔を出し始めて明るくなった頃、泣き疲れていた僕は車の中で熟睡していた…
その時…突然車内が揺れ始めた…
びっくりした僕は慌てて飛び起きた…
今のは何?
ここは何処?
明るくなった周りを見渡すと…
どうやら駐車場のようだ…
そう…見知らぬ男と母親は僕を車内に置き去りにしたまま、寂れたラブホテルに宿泊していたのだ…
でも5才の僕にはそこが何処なのか知るはずがなかった…
しばらくすると二人は車に戻ってきたので、僕は寝たフリをした。
「この子良く寝てるわ…」
呆れた感じで話をしているふうに聞こえた…
すぐに車のエンジンがかかり動き始めたが、この車が何処に向かっているのかわからない…
寝たフリをしていたのも限界な程、実はお腹がペコペコだった…
何故なら前の日から何も食べさせてもらえずお腹がキュルキュル鳴っていたからだ。
必死に寝たフリをして2~3時間がたった頃、高速のパーキングエリアに車は停まった…
僕は起こされトイレに行くよう指示された…
母親が入り口まで一緒だったが…用を済ませて出てくるといなかった…
その時…何処からかイイ匂いがしてきた…
そのイイ匂いにつられてヨタヨタ歩きまわると辿り着いた先には焼きとうもろこしが売っていた…
前の日から何も食べてなかった僕は目の前にあったものを食べたくて仕方がなかった…
もちろんお金なんか持っているわけが無かった僕は焼きとうもろこしを買うことは出来ないのでその場を立ち去ろうとした…
すると…
『おぃ…そこの坊や…お待ちなさい…』
禿げ頭で白髭のおじいさんが話かけてきた…
『何も食べてないのは身体に毒じゃ…これを食べなさい!』
と焼きとうもろこしを差し出してきた。
「ありがとう。おじいちゃん。」
そう応えると白髭のおじいさんは微笑みながら立ち去っていった…
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