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―トントン
「どーぞ」
ドアをノックするとすぐに大好きな先生の声が聞こえた
「…失礼します」
私は相変わらず
オロオロしながら
ドアを開け
そっと部屋に入る
「おー。じゃあいつもんトコ座って。俺もこれだけやったらそっちいくから」
「はい」
そう返事をして
パソコンに必死にかじりつく先生を横目に
“いつもんトコ”となった奥のソファーに座った
先生に『いつもんトコ』と言われて
少し嬉しかった
だってそれは
先生と私にしか
通じない言葉で
そんな言葉が
交わせる程に
先生との距離が
少しでも近づいた
と思える事が
嬉しくて
しょうがなかった
「…亜沢」
先生にいきなり声をかけられビクッとしながら
慌ててニヤつきそうになっていた顔を戻す
「は、はい!!」
「なんで、そんな慌てんだよ(笑)」
「だって……//」
「ふっ(笑)」
先生はパソコンから
顔を上げずに笑う
「で、なんですか?//」
やられっぱなしでは嫌だと思って
珍しく私から話を切り替えた
先生は一瞬「お?」て顔をして私をみたけど
またパソコンに視線を戻して
「お前ってさ、料理得意??」
「え!?なんですかいきなり!!」
「得意?」
真顔で聞いてくる
先生に勝ち目なんかなくて
「得意というか、趣味で作ったりはしますけど……」
私も真面目に答える
てっきり数学のプリントどこまで解けたかとか
最近、進路の話を
ちょくちょくしてたからそういう話だと
思っていたから
『料理得意?』
なんて雑談のような話
いきなりで
びっくりしたけど
雑談なんて
初めてしたから
なんだか嬉しかった
.
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