J.Boy

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俺は、商社に勤めるサラリーマン。勤続10年目の中堅だ。中堅になれば任される仕事も多いが、不況のせいで定時に仕事が終わる。不況ではなければ深夜までの残業していたのだが。全く、不況とは嫌なものだ。お陰で貰える物は少なくなってしまった。 「キーンコーンカーンコーン」 午後5時。定時になる仕事終わりを告げるベル。課の同僚達も帰宅準備を始めた。俺は会社に囚われていた心と体を取り戻し、落ち着いて準備する。もう夕暮れか。最近は暗くなるのが早い。俺は急いで駅へ向かう。皆、不況なのだろう。家路を辿る人波が多い。歩きながらネクタイをほどくと、大声で叫びたくなるような怒りが込み上げてくる。入社した頃は、こんな事を思わなかった。自分で掲げたきた理想は今は遠くなり、守るべき誇りも無くして機械のように働くだけ。燃えていたあの頃の気持ちはどこへ行ったのか?
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