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…これを遠ざけなければ。
だけど、どうすればいい?
手の中の銀色の塊をにらみ、必死に考える。
…体を出してでも、投げ捨てるべきだ。
できるだけ遠くに、少しでも遠くに…
…ぴりりりりり。
唐突に響く電子音。
手の中で震えるそれが、メールの着信を伝える。
とっさにプラスチックの塊を投げ捨てるよりも先に、
その発信者と件名に目が釘付けになる。
『 /みツケたヨ』
件名と"声"が重なって聞こえた。
ぎち、
骨が軋むような強い力で腕を掴まれ、千切られそうな勢いでテーブルの下から引きずり出される。
頭を椅子の脚に強打し、視界が一瞬白くなる。
…その先で見たモノは、そのまま気を失っていた方がマシだと思った。
『みツケたよォ』
自分の胴体ほどに巨大な"顔"が、不快な猫なで声を紡ぎ出す。
…逆さまになった顔の構成。
輪郭は下向き、しかし縫い付けられた"目"は頬に。
鼻梁は上を向き、額についた巨大な"口"がにこやかに。
生臭い息を吐きかける。
「……っ!!?」
声にならない絶叫。
もう自分が叫んでいるのかさえ分からない。
限界に達した脳はそれ以上の情報の流入を拒み、
意識はそこで、ぶつりと途切れた。
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