2XX7年、七月八日(1)     -ある暑い夏の日に-

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やけつくような夏の日差し。 景気とは正反対に気温と体温だけはウナギ登りで、窓を全開にしても効果はまったく感じられない。 何かをする気にもなれず、椅子に体重を預ける。 動かなければ体力は使わないが、流れる汗はどうにも止められない。 「…う゛ぁー……」 …うめいてみても何も変わらず、余計に暑くなるだけだった。 ここ何年か、地球温暖化とやらのせいで夏は地獄になった。 四季のバランスは狂い出し、夏は長くより暑く、冬は短くより寒い。 こんな中途半端地方都市のコンクリートジャングルも、都心と変わらない暑さを誇っている。 「…シロさぁーん…クーラー入れましょうよ…」 溶けそうな暑さの中、耐えているのは俺だけじゃなかった。 「…それは無理な話だ、サイコ」 客用に買った安物のソファーでへばっているショートカットの少女に、俺は現実を突きつける。 「…昨日から電気が停められてる」 「………」 サイコは何かを言おうとして、結局力尽きた。 年なら俺の半分程度だろ、ガマンを知らない現代っ子め。 「…せ」 お、まだ動けるか。 「せめて…水…」 「…それも昨日停められた」 「………」 完全沈黙したサイコは、まぁ放置するとして。
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