2XX7年、七月八日(1)     -ある暑い夏の日に-

4/6
前へ
/345ページ
次へ
スケジュールは見事に丸空き、多少でも収入と暇つぶしになるなら、肉体労働も嬉しいもんだ。 だが、肉体労働なら先に飯を食わせてくれ。 じゃないと餓死るぞ、俺は。 「…シロさぁん…電話ぁ…」 …最早動く気力もないらしい。 俺だって昨日の昼から何も食ってないんだぞ? …もう文句を言う気もなくなり、貴重な体力を使って椅子から立つと… くらり、 視界が歪み、思わず片膝をついた。 …椅子に座って半日。 貧血か脱水症状か。 自分じゃさっぱりわからない。 さっきまでサイコを馬鹿にしてた意地で立ち上がり、ソファーまで辿り着くと。 あお向けに寝転んだサイコが、腹丸出しで携帯をこっちに差し出していた。 オマケにソファーでぐだぐだしてたせいか、スカートがずり下がってピンクのパンツまで見える。 恥じらいを持て、恥じらいを。 うーだのあーだのうめいてるサイコから携帯をむしりとり、 「…はい、柊…」 『おいヘボ探偵! 貴様の事務所はどうなっとるんだ!!』 鼓膜をつんざくような中年男の怒鳴り声。 思わず携帯を耳から離す。 …夏だってのにこのオッサンは。 そんなに元気なら俺にカロリーを分けてくれ。
/345ページ

最初のコメントを投稿しよう!

879人が本棚に入れています
本棚に追加