147人が本棚に入れています
本棚に追加
「ど、しよ…嫌われた…かな…?」
……いくら考えたって、中身の少ない…しかもスッカスカな俺の頭では尤もらしい結論なんて出やしないし、大体拓真の気持ち…人の気持ちなんてわかるはずかない。
「憂姫…」
雅一が俺の名前を呟いた。
重い空気の中、ない頭でひとつだけ出てきた考え。
「…やっぱり、ダメだったんだ二股なんて。二人のことは好きだよ。でも…、俺」
「憂姫っ!」
柚稀がこの先の言葉を遮るように俺を呼ぶ。
「雅一…柚稀、好きだよ…好きなんだ。でも、だからって二人ともと付き合えるほど、俺器用じゃなかったみたいだ…ほんと、ごめん…」
無理、だよ。
男同士だから二股でも大丈夫なんて、そんなの。
「ゆ…き、憂姫…?嫌だよ?別れたくない、もっと、一緒にいたい…」
今にも泣き出してしまいそうな顔の
「柚稀…」
「離れていくなりなんなり、勝手にしろよ…恋愛なんか、片方にその気がなかったら成立しねぇんだ。」
強気なものの言い方のクセに悲しげな顔をする
「雅一…」
「………っつうか、はっきりしなさすぎなんだよ!」
「…え?」
ど…怒鳴られた…?
「二人ともを好きなら好きで、俺に着いてこいくらいの根性見せてみろよ!俺らを引っ張れよ!このヘタレッ!あ―も―ッ!―…何で俺、お前なんかが好きなんだよ…」
項垂れる雅一。
俺を情けないと思いながらも、それでも、切なくなるような…自分じゃどうにもできない苦しみのこもった声で 好き と、独り言のように言われて…胸の奥が苦しくなった。
「ま、雅一…」
項垂れ、しゃがみこんでしまった雅一を柚稀が慰め、背中をさする。
そんな柚稀をギン と睨み付けてまた雅一が立ち上がり叫ぶように言った。
「お前も…お前だ柚稀!こんなウジウジしたヤツ、いくら好きだからってすがるように引き留めてんじゃねぇよ!そんなんだから何時までも憂姫の優柔不断さが直らねぇんだ、引き時も考えて、たまには憂姫に俺らを追わせようとしろっ!!」
「そ…!そんな、意識して追わせたことないんだからわかるわけないだろ!?俺は大体男相手には追って捕まえる側なんだ、男に追わせるテクなんか持ってないんだよ!ていうか何か考えあったんなら教えろよ!」
………あの、俺に追わせようとしてんだよな?
本人に聞かれてていいのか?
つか何かずれてきてないか?
最初のコメントを投稿しよう!