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その音は、高梨さんの逃げた方向から聞こえてきた。 必死に息を潜める僕たちの耳が、どう拒絶してもそれを捉えてしまう。 「……くっ」 「耐えろ、松田。今出ていったらお前まで」 高梨さんは化け物の目を僕たちから逸らすため、身を挺して囮になってくれたんだ。 それなのに、それなのに。 不気味な程静まり返った世界に、不快な咀嚼音だけが響いていた。
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