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僕の方に高梨さんの手が伸びてきたのは覚えてる。
その緑色に染まった指に、噛みついたのも覚えてる。
その指を力任せに喰いちぎった事も、突然勝手に体が動き出した事も、何かに怯えた彼女の表情も、彼女を『美味しそうな食べ物』と認識してしまった事も全部全部全部……しっかりと覚えているのに。
僕は何か、とても大切な事を忘れてしまったような気がする。
「そうだ、音だ」
僕の脳味噌を支配していた、あの小気味良い音楽。
きっとアレをもう一度聞ければ。
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